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ウジちゃんがびょうきになったとき
おいしゃさんにみてもらうことはできない

ぼくのママはいまとてもつらいから
”面倒事”をおこすわけにはいかない

うじちゃんがびょうきにならないように
びょうきになったときになおせるように
ぼくはウジ実装の体のことをたくさん勉強した

12 「としおクン、今日はウジちゃんをマドのそばにおいてほしいレフ」
ある夜、ウジちゃんが言った

「どうして?」

「ウジちゃんは、まんまるオツキサマのよるに、おイトをはいて仔実装になるんレフ。
だからオツキサマがよく見たいレフ」

ウジちゃんは”繭”になって小さい実装になることは、勉強してしってた
でも、まんげつの夜にそれがおきることはしらなかった
「さむいから、もっててあげるね」
「あたたかいレフ…」

「オツキサマ、おねがいレフ。ウジチャにおイトを下さいレフ…おねがいレフ…おねがいレフ…」
ウジちゃんは、しんけんにお月さまにおねがいした
不安そうな声で、なんどもおねがいをした

ぼくとウジちゃんはその晩、
今まででいちばん、よるのおそくまで、いっしょにお月さまをみていた
追加 次の日の朝、起きてすぐウジちゃんを見てみたら、仔実装になってなかった

「ダメだったレフ…」
ウジちゃんは箱の中でしょんぼりしていた

「きっと、モヤモヤがオツキサマをかくしてたからレフン」
「そうだね。次はきっと雲のないお月さまが見えるよ」

ぼくはがなぐさめると、ウジちゃんはまた元気をだしてくれた



13 次のまんげつの日は、雲ひとつないキレイなお月さまが見えたけど、ウジちゃんは糸をはけなかった
ウジちゃんはよほどがっかりしたのか、朝起きたとたんに泣きだした
「レフン…レフック…レフン…」
かなしくて震えているウジちゃんの顔の下で、白いビニールひものりぼんがゆれている

「ウジちゃんがオネチャみたいなオリボンがほしいって言ったら、ママがつけてくれたレフ。ウジちゃのタカラモノレフ…」
ぼくがりぼんのことを聞いたとき、ウジちゃんはそう言った

ぼくがご飯の前におやつをほしがったとき、ママはおやつをくれない
ぼくがお誕生日の近くにおもちゃをほしがったときも、ママは買ってくれない
もうすぐご飯がたべられるから
欲しい物がもらえるから、それまでがまんしなさいってママは言ってた


ウジちゃんがりぼんをもらえたのは
”仔実装のりぼん”が、ウジちゃんには”ずっと”手に入らないから
ぼくはそう思った
14 まんげつの夜からウジちゃんはげんきがない
ごはんもあまりたべてくれない
夜はおそくまで起きて、月を見上げている

ウジちゃんがうちにきて2ヶ月たったけど、少し太っただけで、体は大きくなっていない
これは”未熟蛆”のとくちょうだって本に書いてあった
”未熟蛆”はママのお乳を飲まないと体が育たず、ないぞうにしょうがいがあるから
どんなに大事に育てても、1年くらいでほとんどが死ぬ

蛆実装は仔実装になれなかったら長くは生きられない
ウジちゃんを仔実装にする方法は知っている
でも、それをするにはウジちゃんを傷つけなくちゃいけない
…それに、なんとなく、ウジちゃんは、いまのままでいてほしい、気がする…

何日も迷っていたけど、ある夜ぼくはウジちゃんに聞いた
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